2021年6月6日

No.83 赤い車とAgipステッカー ~ ワンハンドステア論 ~

 「Agip(アジップ)」の黄色いロゴといえば、かつてフェラーリのF1マシンに貼ってあったので、F1人気が絶頂だったバブルの頃には、あちこちでこのステッカーを貼った車を見かけたものだった。


黄色地に6本足の炎を吐く犬のロゴが、特にフェラーリレッドを飾ったためか圧倒的に赤い車が多かったような気がする。

足6本で炎吐く犬がなんとなく強そうで、当時からこのステッカーチューンだけで推定5馬力アップは間違いなしだな、と密かに確信していた(笑)。


アジップは、元々イタリアの国営石油会社だったのだが、2003年にイタリア最大のエネルギー企業であるエニ社と統合し、2010年からは両ブランドが「エニ」に統合されたため、アジップブランドはもはや存在しない。

でも、気にしないで今回ステッカーチューンしちゃったもんね。
はい、推定5馬力増し~(笑)
チューンしたので軽く峠を攻めてきた。


試走の感想は・・・

速くなる・・・わけはないが、天気も良かったので気持ちの良いドライブとなった。
ライバルは「秋名のハチロク」と勝手に思ってる「小坂のレヴォーグ」である。

toskaniniはハンドル操作は基本右手しか使わない。多分、もう何十年もの習慣なので、峠を攻めるときですら右手のみでハンドル操作、左手は昔ならシフトノブ操作専門、今はCVTのシフトレバーの上に置くだけなのだ。
(仕事で運転する場合はちゃんと両手で操作してましたので、一応・・・)

なので、イニシャルDでパープルシャドウの城島オヤジがワンハンドステア(シングルハンドステア)のゴッドアームとして登場したときは、まじで「俺がモデルじゃね?」って思ったぐらいだった。

漫画のワンハンドのシーンではちょっと違和感(あんな最小の舵角だけで走れないって実際の峠は・・・)があったので、ざっと30年取り組んできたtoskaniniのワンハンドステア技術を考察してみたい。

実は、ハンドルをワンハンドで操作すること自体はさほど難しくない。
街乗りや峠を低速で走行するだけなら、ちょっと器用な人なら難なくマスターできるだろう。
でも、「両手操作と遜色ないレベルで車をコントロールするワンハンド」だと途端に難易度が跳ね上がるのだ。

そもそも、両手操作と片手操作の根本的な違いは何だろうか。
「ハンドルから手が離れる時間の長さ」=「コントロール不能時間の長さ」これが圧倒的に違うのである。
両手ならハンドルからまったく手を離さずに操作が可能である。
しかし、右利きが片手でハンドル操作を行う場合、12時の位置を純手で持ってハンドルを回そうとすると、時計回りに約200度(半周強)、半時計回りに約160度(半周弱)ぐらいまでしか持ったままでは回せない。
それ以降は必ず一旦手を離してハンドルを持ち直して、さらに切り込む動作が必要となる。
けっこうな頻度で、手を離して同じ手で再度持ち直して、の繰り返しとなる。

この手を離している時間が、リスクに対し無防備なのである。
大きめの石やコーナーの落ち葉の塊に乗り上げたりオーバーステアやスリップその他、様々な力でハンドルを取られたときに瞬時の対応ができない、ハイスピード領域なら重大事故にもつながりかねない。

でまたまた考えた。
「このリスクを両手操作並に低減するためには?」

で考えた対処策は以下の3つ。
①手を離す時間の極小化を図る。(なるべく離さない)
②ハンドルから手が離れる瞬間と、足の操作により車体が不安定になるリスクが高まる瞬間が重ならないようタイミングを調節する。
③ハンドルから手が離れる時間を分割する。・・・である。

①を詳述すると、例えば順手持ちと逆手持ちの握り替えだけならば、親指を鉤型にして引っ掛けながら行うとか、手のひらの腹を強く押し付けながら手首を返すとか、とにかく手を離さない技術を考案して駆使しまくるのである。

②を詳述すると、峠での右足の動作は基本的に、アクセル踏み込む、アクセルパーシャル、アクセル抜く、ブレーキ踏むの4つしかない。(実際にはもっと細かく分割されるけど)

このうち「アクセルパーシャル」のときのみ手を離すことが許される。逆に言うと、アクセルを踏み込んだり、抜いたり、ブレーキ制動中は回転モーメントや荷重移動の影響により車体が不安定なことが圧倒的に多いので、そのときはハンドルから極力手を離さない。完全には無理でも「極力」その場面は避けるようにするのだ。

これは恐ろしく難しかった・・・最初は頭で考えながらやろうとするが手足がまったく追いつかない。
そして、逆にハンドル操作に足の操作の方を合わせる場面もあることから通常のスローイン・ファーストアウト、いわゆる十分に減速して進入しコーナー出口で一気に加速する最速のセオリーと合わないこともある。もとより片手で安全に峠を攻める技術なのでこれは致し方ないところ。
繰り返すがとにかく本当に難しい究極難易度のハンド・フットコーディネーション技である。

③を詳述すると、ハンドルから手を離すパターンと時間は様々。
ハンドルが自力で戻ってくるのを手離しで待ったままになる場合もあるし、積極的に別の部分の持ち直しのため腕を動かすこともある。
例えば1秒間で180度持ち直したいときに、0.5秒後に90度の場所を一瞬握って、その0.5秒後に180度の場所を持つ、みたいな技術である。これも結果としてノータッチリスクの分散化と極小化につながる。
鍛錬の結果、大体、1秒間を3分割できるようになった。1秒で「ギュギュギュ」って感じである。まぁ「握る」というよりは半分は押さえの要素が強いかも。

低速度域から、そして街乗りから、徐々に難易度を上げて練習と習熟を繰り返し最終的にかなりの安全マージンを確保しながらワンハンドステアで峠を攻めることができるようになったのである。
当時はマニュアル車だったので、クラッチ+シフト操作があり、精度の追求にもおのずと限界があったのだが、オートマになってからはグッと身近な技術(toskaniniにとっては)となっていった。

しかし・・・
一体、片手でハンドルを操作することになんの「目的」があるのだろうか。
両手操作に対して「メリット」と「アドバンテージ」がないのは明らかである。

実は大学生のころ、海までのドライブを助手席の彼女と手をずっとつないだまま行けないか、真剣に考えたことがその原点である。

誰もが経験するであろう、片時も離れていたくない、熱にうなされたような若いがゆえの恋愛が引き起こす罪な技。
「無駄でありながら有用」、逆説的ではあるが、ワンハンドステアとは案外そんな言葉がピッタリくる異端の技なのではないかと思う。

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