2019年12月28日

No.62 国産鉱物3 宮城県でアメジスト、メノウの産地を発見せよ!

藪が枯れ、河原に降りやすくなった10月中旬、宮城県でメノウの採集を行った。
そして、10月下旬から年末まで、何度も場所を変えて採集を繰り返し、供給ポイントに近い場所を絞り込んだ。






それは、ある観光地情報がきっかけだった。
「宮城県のP河川の◯◯◯付近でメノウが拾える」という記載を見つけたのである。
だが、ネットで鉱物産地情報を探してもそれらしい情報は何も見つからない。
かろうじて、地元自治体のパンフレットにそれらしき記載があり、自治体が発信する情報ならば・・・と思い、まずは試掘に近い気持ちでP河川の河原を探索することとした。

グーグルマップとGeographica上で河原に道が接している条件で大体の見当を付けて、あとは現地へ行ってなんとかするつもりで出発した。
駐車スペースを探すのに若干手間取ったが、なんとか見当を付けた場所で河原に降りることができ、約1時間で2個、メノウと思しき次の石を拾うことができた。


本流で拾った石その1


本流で拾った石その2

いずれも福島県のメノウに比べ川ずれが進んで丸っこい石になっている。石英系鉱物はザックリ言って、水晶、玉髄、瑪瑙が硬度7、オパールが硬度6ぐらいあるので、よほどの距離を川の流れの中で揉まれてこないとこんなに丸くはならないはず。
また、河原を1時間みっちり探してようやく2個なので絶対数が少ないように思う。
(もっともヒスイを拾う苦労に比べれば・・・)

メノウの魅力はなんといっても「断面の縞模様」。
少しでも産地に近い場所でゲット出来れば、鮮度の高い破断面を持ったコレクションサイズの(少なくとも5〜8cm程度の大きさは欲しい)標本がゲットできるのでは、と思い、もっと供給ポイントに近い採集地の絞り込みを行うこととした。
あらゆる支川の石が集積する大河川の河原で拾うのは効率が悪い、という思いもある。

絞り込みの方法は、周囲の山々に複数の鉱山跡(金、銀、銅、亜鉛、水晶等)があることは判明しているので、それらの推定位置から、鉱脈からこぼれた鉱石、付随する水晶(紫水晶)、玉髄、メノウなどが転石として落ちそうなP河川の支川や沢を地図上で推理し探索する、というかなりアバウトでギャンブル要素を含む手法。
しかし、実は、ピンポイントの場所検索ではなく「なるべく◯◯に近づく」みたいな範囲を狭めていくタイプの探索ミッションの場合には、こんなやり方でも有効なゴールソリューションとなり得ることを長いトレジャーハントの経験から学んだのである。

ただ、今回の調査範囲には支川が3本もあり、支川に流入する名も無き沢も10本以上あるし、当然その内の数本は渇水期の今の時期は枯れ沢だろうから、机上での推理を地形や地理からうまく行わないと(特に等高線の読み方が毎度のことながら悩ましい!)、空振りが続き、トライアンドエラーの繰り返しに挫折してしまいそうである。
先に3本の支川を探索して当たりを付けるのだが、そこから先はまさにアドべンチャーツアー!、結果は神のみぞ知る、である。

toskaniniが今回のミッションに対して立てたソリューションプランはこれ。
いつも最初の企画はこんな風で、調査が進むほど詳細なペーパーが増えていく感じである。




しかし、我ながらユルユル感いっぱいだな(笑)

そして、何週間かかけて(平日に有給を取れたのが調査の進展に大きく貢献した。働き方改革バンザイ!)年末までに得られた成果は以下のとおりである。

ちなみに、ここの産地のメノウと玉髄は蛍光しない。(微蛍光する部分はある)その点で、青白色に強く蛍光する福島県産メノウとはまったく異なる生成過程を経ていると推定できる。
(蛍光メノウについては別途紹介する)







これはかなり大きなアメジスト。実物は写真より色がもっと藤色で濃い。(2枚目の写真のほうが色味が近い)かなりのお気に入りである。


縞模様がなかなか良い白メノウ。


球顆型。多分切断すると縞模様がきれいっぽい。ま、ストーンカッターを持ってないのだが(笑)


黒地に白と紅が層になっており美しい。




これもかなり大きい。津軽錦石に似ている!と瞬間思った。


透明感のあるアメジスト。紫、緑、カーキ、白の4色が層になっている!
紫が濃いのにビックリである。もう少しカーキと白の色の境目がクッキリしていれば言うことなしだったのだが・・・これは超が三つ並ぶぐらいのお気に入りである。家宝レベルかもしれないと密かに思ってる。


母岩が赤チャート系なのはこれ1個だけ、中央部は黄色がかった玉髄の周辺をアメジスト色の玉髄が巻いている。


まあ、普通(笑)。ただ層になってるだけ。


まあ、普通その2 もう少しラベンダー色だったら。


まあ、普通その3 黒、白、黃の3色構成。


福島県側では薄紅色の長石の黒雲母花崗岩はごく限られた場所でしか産出しない。有名石材ブランドの「吾妻みかげ」も「磐梯みかげ」も真っ白い長石主体である。なので珍しいこの「薄紅みかげ」は迷わずゲット。福島県梁川町の花崗岩は青紫に蛍光するが、この薄紅色の花崗岩の蛍光具合を調べるのが楽しみである。






これも大きめ(9cmぐらい)で藤色がきれい。アメジストと呼んでいいほどのグレード。水晶と玉髄がきちんと層になっている。


縞模様が比較的分かりやすくていい感じ。




アメジスト色の玉髄。縞模様が見えるのでメノウに分類される。3〜4cmぐらいだが欲を言えばもうワンサイズ大きければ・・・
最初「同じ紫でもメノウじゃ・・・アメジストの方がよかったな」と思ったが、



実はこの小石、光に透かすと、玉髄以外の部分はアメジストのクラスター(群晶)だったものが川ずれで丸まったものだと分かる。
・・・ということは鑑賞に耐えられる大きさの単晶が採れるかは分からないが、供給ポイントを見つければ、少なくともアメジストの群晶が産出することは確実である。



10月から年末までの成果はこんなところ。
かなり深くまで山を分け入ったが未だ川床や露頭にダイレクトな脈は見当たらない。
しかし、ズリ石の散乱地や供給ポイントに大分近づいたらしく、結構ゴロゴロと玉髄や縞メノウ、石英、水晶・アメジストの群晶くずれが拾える場所に到達できた。
贅沢にも、よほど綺麗なメノウかアメジストじゃない限り川に戻すようになってしまった。
あと数ヶ月もあればかなりの確率でピンポイントで供給ポイントを特定できそうに思うが、丸くなり過ぎず原石感を程良く残した丁度よい川ずれの標本にも十分な雅趣があり、一応これで、「お宝到達、トレジャーハント成功!」ということにしたい。

本音はこれ以上の沢登りは体力的にきついから(笑)
でも今後、気が向けば更なる探索もあるかもしれない・・・

以前は、自分で見つけたお宝達を手のひらの上に眺めながら酒を飲むのが至福の時間だったのだが、最近は、それと同等かそれ以上に、リサーチやプランニング、試行錯誤しながらの現地踏査、腰痛や筋肉痛との戦い、虫たち(アブ、ヒル、蚊、ハチ)との遭遇(笑)、発見時の心踊る瞬間などすべてのプロセスにトレジャーハンティングの醍醐味を感じられるようになってきている。

ウィスキー&ゲットした鉱物の組み合わせは、現在最強のマイブームである。

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