2018年1月13日

No.50 ニーシング(NIESSING) 確かに「至宝」の名にふさわしい

現代は、なんでもネットやスマホで検索すれば画像付きで情報が表示され、すべてを分かったつもりになれる良い時代なのだが、依然としてドイツのジュエリーブランドNIESSING(ニーシング)は謎が多いように思う。

マーケティングよりもデザインと品質で勝負しているからなのだが、そういう企業姿勢にも大きな魅力を感じる。





(写真上:テンションセッティングリング「テーパレッド」「オープンエンド」)
(写真下:グラデーションカラーリング「オーラ(レッドからグレー)」「アイリス(ゴールドからシルバー)」)
 ※ 公式HPにもっといっぱい載ってる。

現状、ニーシングのジュエリーは直営店が全国で3店。宝飾店で国内取扱しているのは10店ぐらいなので、近くに店がなければ容易に実物を見ることはできない。
また、調べた限りネット販売は一切していない。
オーナーのレビューを探しても詳細な解説付きはほとんどヒットしない。

今時、不動産や車、美術品に電気製品や保険、果ては米や生鮮食料品に至るまでクリック一つで何でも買えるわけで、逆に、ネットで買えない物を探すほうが難しいのだが、ニーシングはその数少ないネットで買えないアイテムの一つである。

そんな中、ほとんど唯一と言ってもいい詳しい情報が、ブログ「時計技師・宝石鑑定士・貴金属彫金士ダンジの裏話」さんに載っており大いに勉強になった。
テンションセッティングの秘密、真似のできない冶金技術、製法が謎である数々のモデル、etc・・・美しい唯一無二のジュエリーが好きな方ならぜひ一読をお勧めする。
プロならではの鋭い考察にホレボレとしてしまう。
http://danzi.exblog.jp/1664662/ (ニーシングその1)
http://danzi.exblog.jp/3464626/ (ニーシングその2)
http://danzi.exblog.jp/3924470/ (ニーシングその3)
(「ドイツの至宝」の表現も拝借しました m(_ _)m)

一気にニーシングファンになり、いつかブログで語れる日が来るといいな、と思っていたが、先日東京への出張のついでに南青山にある直営店へと行ってみた。

長らく(10年以上)憧れていたニーシング、実物(ほとんどがリング)は、想像以上に美しく芸術性が高かった。
6、7年ぐらい前にカタログを郵送で頂いてから、穴が空くほど見たおかげで、リングのモデル名がすべて頭に入っていた(笑)ので特に店員さんの手を煩わせることもなくじっくりと堪能できた。

感動したポイントは4点!

その1「テンションセッティングに驚愕!」

テンションセッティングの「ニーシングリング」の基本タイプも派生タイプも、デザインがバウハウスの流れを汲む究極のシンプルデザインであることに加え、ダイヤの輝きが普通のセッティングの5割増に見える!

これ、誇張じゃなく、ダイヤと目の間に光線の遮蔽となる石座や爪がないので当たり前の話であり、正真正銘ブリリアントカットされたダイヤの輝きを最も引き出せるセッティングだと思う。
そして、横から見ると・・・うわっ、ダイヤが宙に浮いている!
(個人的に一番のお気に入りは「ナルシス」だな、やっぱ)

ちなみに、多くの人がエンゲージリングの定番として認知している6本立爪はティファニーの発明で「ティファニーセッティング」が正式名称。
テレビショッピング等には安物で石と爪の大きさのバランスや角度がめちゃくちゃでダイヤが美しく見えない自称だけの「なんちゃって立爪リング」もあるが、本当の美を身に着けたい方、ファッション通を自認したい方は、ぜひ一度はティファニーのリングの実物を実際に手にとって見てほしい。

それから、ヴァンクリーフ&アーペルが発明した「ミステリーセッティング」も初見での衝撃がすごすぎるし、かつとても美しい。

この「テンション(ニーシング)セッティング」、「ティファニーセッティング」、「ミステリーセッティング」が一応3大セッティングと呼ばれているのだが、一緒に5大ジュエラーと称される
 ハリーウィンストン/アメリカ
 カルティエ/フランス
 ティファニー/アメリカ
 ブルガリ/イタリア
 ヴァンクリーフ&アーペル/フランス
の歴史やデザインの特徴も学ぶととても勉強になる。

なお、ニーシングではそもそもの地金づくりを自社で行なっており、企業秘密の冶金技術や鍛造製法により超硬度な地金の製作が可能となり、とてつもない圧力でダイヤを挟んでいるのだそう。
だから「テンション(張力)」なのね。
確かに実物はびくともしなかった。
なので、見た目だけ真似した「似非テンションセッティング」とは仕組みそのものが違うと言っても良い。

アマゾンなどで形だけニーシングを真似したジルコン(最近は「CZダイヤモンド」などともっともらしい名前で消費者を騙そうとしている(怒!))をテンションセッティングしたリングがたまに格安で売っているが、レビューに「気付いたら石がなくなってた・・・金返せ!」があるのはもはやお約束のようである(笑)。

かつて、テンションセッティングリングの模倣が争われた裁判の結果、「ザ・ニーシングリング」の最初のモデル「ラウンド」は、2000年、ドイツの高等裁判所にて美術品として認定され著作権を取得。
それ以後、贋作から身を守られる芸術的著作権保護の対象に認定されている。

その時の判決(要旨)が圧巻!!
「ニーシング社のリングはただのジュエリーではなく芸術品にほかならず、これを模倣することは、単なる知的財産権の侵害だけでなく芸術への冒涜である」だそうな。
・・・凄すぎる。裁判官にここまで言わせるとは。

その2「グラデーションカラーのミステリアスなこと!」

「オーラ」「アイリス」に代表される、2種類の金属(例えば、純金×純銀)を境目のない美しいグラデーションに混ぜ合わせたかのような地金は商業レベルではおそらく唯一無二の存在、その製法は謎に包まれている。
普通は境界線が必ず現れ、金属の境目が分かってしまう。(多分普通は「接合」だからか?)
これもやはり、あらためて実物を見ると、頭の中のこれまでの知識・経験と現に目の前にある物体とのギャップに衝撃を受けるのである。
ニーシングが、優れた冶金技術を有し地金を自社生産してるからこそできるのだろう。

その3「すべてのデザインがモダン、究極の引き算!」

ニーシングリングは究極の引き算だと思う。最小要素で最大の美しさを求めた一つの理想形だと思う。
それ以外のラインナップもモダンでシンプルライフ志向の人々の感性に強く訴えかけるデザインとなっている。

その4「鍛造なので硬くて、頑丈!」

18金の細身の指輪をつり革をギュッと握りしめた勢いで変形させてしまった人もけっこういるのではないだろうか。
ゴールドが柔らかい金属というのは常識であり、(だから硬い金属を混ぜて18金に品質を落としてまでしてジュエリーの地金に使われる)こういった事故もやむを得ないのだが、ニーシングにかかるとそうではなくなるのだ。
指輪の製作法には大きくわけて「鋳造(ちゅうぞう)」と「鍛造(たんぞう)」があり、鋳造はリングの型にプラチナやゴールドを流し込んで冷ましただけのもので世の指輪のほとんどはこれ、一方鍛造は一つひとつ職人が叩くかプレス機に掛けるかして圧力で金属を固めていくもの。指輪にここまでするジュエラーは普通いない。
鍛造の代表例が「日本刀」であり、あの熱してはハンマーで叩く、を繰り返す姿をイメージしてもらうと分かりやすいかと。(実際には機械による圧力プレスだとは思うが・・・)
やわな造りでは、「一生モノ」を語る資格なし。これtoskaniniのコレクトポリシーの一つである。
(注:鋳造にもメリットはある。複雑な形状が可能、早く大量な生産、など)

そのほかにも
「15色からリングの地色を選べる! グリーン系の金とかサンドベージュ系の金もあるだと!」

例えばゴールドと言えばYG(イエローゴールド)、PG(ピンクゴールド)、WG(ホワイトゴールド)の3つしかないと思っている人がほとんどと思うが、ニーシングではそんなことはないという事実、などなど
まだまだ語り尽くせないほどの魅力がある。

もちろんデメリットもある、おそらく鍛造ゆえ通常の工具や手法では硬すぎてサイズ調整ができないのだろう。
リング購入後サイズ調整をしようと思うと、ドイツ本国に送らないと調整できないらしい。ワールドワイドで壮大な仕様となっている(笑)
んで、運良くサイズの合う在庫があったのでリングを買って帰ったのだが・・・
ちなみに、どんなに高額なリングでもパッケージは共通であるらしい。



まず、手提げ袋・・・静謐な純白。



中には、6方結びのリボン掛けした箱(布張りにブランドエンボス)と、最新のカタログも4冊いただいた。



箱の中には、厚手の布製のリングケース(ブランドタグ付き)

そして、その中には・・・

すみません、買ったリングは自分使い用のリングなのだがどのモデルかは内緒に。
なんか中途半端なティーザー広告みたいになったが、当ブログのどこかの記事に写真をこっそり載せとくので、暇な人は探してみてほしい (^^)


このジャンルから
 ブランド7(レノマパリス再び!)
 ブランド6(「ジーンズにジャケット」を生んだ伝説のレノマパリス)
 ブランド5(コンカラー:サーファー御用達のシューズ)
 ブランド4(バーバリー:ロンドンとプローサムの違い)
 ブランド3(ニーシング:ドイツ至宝のジュエリー)
 ブランド2(ゼロハリバートン:自己満足という名の孤高)
 ブランド1(バカラ:至高のクリスタル)

別のジャンルへ
 オーディオ 芸術・アート
 国産鉱物 腕時計 ブランド
 名作椅子 革靴  
 美食・酒 謎・テクノロジー・宇宙

0 件のコメント:

コメントを投稿