2017年11月15日

No.48 シェルダイヤル(MOP)の腕時計 真珠の輝き ケンテックス マリンマンを買った

以前、「シェル(貝殻)ダイヤル、MOPダイヤルの腕時計はすべて世界でたった一つの1点モノ」という話を手持ちのSEIKO SCUBAとともに紹介したが、新たにシェルダイヤルの腕時計を購入した。
購入したKENTEXのダイバーズは良心的な価格のいい時計なのにネット上でも、まだあまりレビューされてないようなので少し詳しく紹介したい。

「KENTEX MARINEMAN SEAHORSE II S706M-18」

元セイコーの技術者の方が独立して立ち上げた純国産ブランドのダイバーズウォッチである。
KENTEXというブランドはネットで見て知っていたが、実物を見たのは初めて。






おそらく個体ごとにベース色や遊色の色や光の斑の発色具合が違うと思われ、ちなみにこの子は、照光時-全体が均一に青緑~緑地に輝き、所々紫とピンクが混じって発色する感じ(写真1、2枚目)なのだが、通常-淡いピンクがかった極めて薄い色のグレー(写真3枚目)である
パールの写真撮影は素人には難しい・・・違いがわかりにくかったらスマソ。
7時から12時側にかけての左側は比較的平滑面で、1時から6時にかけての右側は貝殻特有の細かいうねりがあるため干渉色は右側によりはっきりと出る。

シェルダイヤル(MOPダイヤルとも言う)は白、銀、淡桃、黄、緑、茶など母貝の種類や個体の違いにより色調も輝きも様々。

そもそもシェルを裏側から染色してベースカラーを変える場合もあるし、干渉色の入り方も真珠質のシルバーやグレーの輝き一色だけで遊色がほとんど生じないものもけっこう多い。
好みもあるのでそれはそれで良いのだが、「白蝶貝は銀一色が本来の色なんですよ~」と嘘の営業トークをする店員もいるので要注意!

個人的には、光の加減によって刻々と姿を変える虹色の煌めき(遊色=Play Of colors)こそがシェル好きの王道だろうと思う。

そして、それを楽しむために数多くの美しいシェル、パール、オパールを見て自分の眼を養いつつ、好みの色調のプレイ・オブ・カラーを探し求めるのが趣味道ではないか、と思っている。

今回の場合・・・

何気に地元の百貨店の時計売り場を歩いていたら、いくつものショーケースの時計群の中で、一個体だけ、輝いているじゃないか!
あの魅惑的で独特で超美麗な虹色の真珠の煌めき。
もう、感覚的には真珠やオパールそのもの。
時計であると同時に宝飾品である。
天然モノの美を「神が作り上げた」と評するのは比較的西洋の宗教文化圏に多い特徴だが、toskaniniもオパールや真珠を見る度にその神々しい美に感嘆させられてしまう。

だから、びっくりした。

何がって、まず、普通は出会えないから。
メンズの機械式腕時計で天然真珠の母貝(マザー・オブ・パール)製の文字盤の腕時計なんて。
しかもビッグサイズのダイバーズだと!
だって現行品だとどのブランドにもそんなラインナップはないと思っていたし、極端なことを言うと記念モデル以外のシェルダイヤルは高くて手の出ないロレックスのデイトナ、デイトジャストかタグホイヤーのカレラぐらいしかないと思っていたから。
(SEIKO ASTRON のSBXB063がメンズスポーツのシェルダイヤルで15万円ぐらいなのだが、機械式じゃなくソーラー駆動のクォーツ時計である、実に惜しい!)

クオーツのレディース向けドレスウォッチならマザー・オブ・パールの文字盤もたまには見かけるのだが、スポーツ系メンズ、しかも機械式腕時計だと真珠のダイヤルは超希少。

ええ、ヤバイこととは知ってましたけど、発言がほとんど脊髄反射でしたよ。

悔しいけれど・・・

馬鹿な俺「すみません・・・ショーケースのこの時計なんですけど・・・」

店員さん「はい、お出ししましょうか?」

馬鹿な俺「いえ、買います(回答まで0.02秒)」

店員さん「えっ?!(予想外の回答だったらしく一瞬固まってた・・・)」

その後、買うと決めてから値引き交渉したのだが、実は新しくその日にケースにディスプレイしたばかりで、近日中にKENTEXフェアを行う予定だったとか。

もともと性能や造作に対して良心的な価格設定を行うと定評のあるメーカーなのだが、フェア前だったにもかかわらずフェアと同じ率で割引してもらった上、特別サービスで天然セーム皮までいただいた。

なんかラッキーである。

いや、予定外の出費なので、家計的にはアンラッキーである。
いやいや、良い時計との出会い、それは超ラッキー、と無理にでも思うこととした。

で、早速インプレッションを

ケース径 44.8mm(でかいです。とっても)

厚み 12.8mm(厚いのだが、防水性能=堅牢さの割には薄めと思う、だからアツウス)
重量 約200g(重いです。とっても)
風防 サファイヤガラス製 裏側(内側)に無反射コーティング
ISO6425規格 200m本格潜水防水(これってすごいことである。「20Bar」みたいなエセダイバーズじゃない)
ちなみに本格潜水防水のプロ用ダイバーズウォッチとは、このISO6425(ダイバーズウォッチ国際規格)に準拠し定められた11項目の基準をクリアしているものを指す。

ムーブメントは、日本製自動巻き、21,600振動(1秒間に6振動)、24石、三針デイト、秒針規制機能、手巻き機能付き(どうやらセイコーインスツル製の NH35A らしい。だとすれば、高価ではないが実績がそれなりにある枯れたムーブメントなので及第点かな)

ダイバーズ特有のデザインポイントでもある外周リング、いわゆるルーレットベゼルはファインセラミック製、サファイアと同じ硬度のセラミックなので耐摩耗性と耐スクラッチ性がかなり高い。

そして、セラミック製なので、光沢の具合がいわゆる金属的な輝きとはちょっと違う。
金属同様に硬さと冷たさは感じるがもう少しトロっとしてると言うか、表現が難しいが大理石のテーブルのような表面質感である。
ちなみに、ベゼルはダイビングでの事故を防ぐため当然に逆回転防止機構付きなのだが、回転自体は非常に渋い(重い)、が、もう海に潜ることはないだろうからほとんど気にならない。

アロー型の針とインデックスの蓄光はスーパールミナス、メーカーHPには「光の届かない深海での作業においても判読性を確保するため、最高級のスーパールミナスを採用」とあるが、実際に確認したところ蓄光・発光性能は並み。手持ちのオシアナスやオレンジモンスターやGショックの方が上である。

この点はちょっと不満。

888個の限定生産品でケース裏面にシリアルナンバー刻印有

店員さんによれば、あまり大量に生産しないのがブランドの戦略らしく、一定以上の金額のモデルは限定生産品であることが多いとのこと。
ちなみに、このマリンマンS706Mにはダイヤルやベゼルの色違い、ベルトが金属orラバーで兄弟モデルがいくつもあるが、これだけ888個で他は188個という中途半端な数量の限定品らしいのがちょっと謎い(笑)

ケースのステンレス素材は「SUS316L」

一般にステンレスは耐食性(防錆性)に優れているのだが、数あるステンレス合金のうちでもSUS316系はモリブデンを添加してあり特に防錆性能が高いので海水に触れるダイバーズのケース素材としては最適である。
そして、SUS316シリーズには「SUS316L」と「SUS316」の2種類あるのだが、前者の「L」はローカーボンの意味で、より炭素含有量が少ないため防錆性能はより高くなる。(その反面、硬度は後者の方が高くなる)
また、SUS316Lはサージカル(医療外科手術用途)グレードステンレスであり金属アレルギーを起こしにくい点も評価したい(汗かきなので・・・)

ちなみに、安い時計からそこそこいい時計には同じステンレス合金でも「SUS304」が使用されることが多い。カタログ等に特段の記載がなければほぼこれに間違いない。ごくごく普通の加工しやすいステンレス合金である。
次に、限られた高級時計に使用されるのが、KENTEXマリンマンが採用する「SUS316L」。メーカーだと「オメガ」「パネライ」「ブライトリング」「ゼニス」などが採用。硬さ、粘り、傷の付きにくさ、錆への耐性、金属アレルギーの起こしにくさ(科学的安定性)などあらゆる点で「SUS304」の上位互換素材である。当然に素材そのものの値段も高いし、より高い加工技術も必要になりそれは最終的に製品価格に反映されることになる。
そして、「SUS316L」以上に堅牢性と耐食性に抜きん出た「SUS904L」という高級な超合金があるのだが、その特殊な素材を腕時計用に転用・加工できる技術を有するのは世界で唯一ロレックス社だけとなっており、ロレックスの時計がたとえステンレス製でも他の時計とは別格であることの理由の一つとなっている。

マリンマンに話を戻すと、ケース裏面の裏蓋中央にはなんと金色のメダリオンが!(・・・良く見ると山吹色ではない。おそらくブラス(真鍮)ではないかと推察)

これは、アンティークのGSやKS好きにはたまらない趣向である。
ブランド代表がセイコーの技術者だったことに関係があるのでは、と思わずにはいられない。

細部の造作にも手抜きはなく、仕上げやパーツの噛合いも丁寧である。

金属ブレスレットの成り立ち(腕時計を貴族しか手にできなかった頃は革ベルトが標準であり、汗まみれで働く労働者階級への腕時計の普及が金属ブレスレットの誕生・改良へとつながっていったこと)からも、金属ブレスレットは基本的に頑丈なのだが、相対的に弱い部分(壊れやすい箇所)がある。

それが、バックルの部分。
日に何度も付けたり外したりするので摩耗もさることながら、ひょんな拍子で力がかかると弱い部分に歪みや曲がりを生じ、時計を腕に付けるときに「カチッ」と気持ちよくはまらなくなってしまうことも多い。
このバックルへのこだわり(操作性、耐摩耗性)まで記載してあるメーカーHPにもいたく感心した。
そのモノづくりへの姿勢に対してである。

ホームページにブランドコンセプトとして、「私たちは日本のクラフツマンシップでディテールにこだわり抜き、 機能と美を融合させた価値ある時計を造ります。 持つ人に本物の感動を与えたい。 時を経て永く愛される時計を造りたい。 この想いを形にしたケンテックスの時計が、親から子へと世代を超えて受け継がれていくことが 私たちの夢です。」と記載しているだけのことはあると思う。

・・・とまあ、いろいろと勝手に述べたが、最後に、何より、どんな機能や意匠のことより、言っておかねばならないことがある。




「マザー・オブ・パール(真珠母貝)が超絶美しくて卒倒しそうになる」
「プレイ・オブ・カラー(遊色効果)が素敵すぎて見るたび萌えてしまう」

ブランドの知名度がどうこう、仕様がどうこう、スペックがどうこう、ギミックがどうこう、その他あれやこれや・・・

そんなのは二の次、「神が作った世界でたった一つの芸術品」を手にするということ。
おそらく、だが間違いなくこの時計の価値の本質はそこにある。

このジャンルから
 腕時計11(オリエント mon bijou(モン ビジュ)手巻き)
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3 件のコメント:

  1. 初めまして。
    僕も、シーホースⅡのホワイトMOPのホワイトラバーベルトの愛用者です。
    ホワイトのダイバーが欲しくて、このモデルに決めました。
    おっしゃる通り、MOPのオンリーワンの輝きには、惚れ惚れします。
    今や、グリーンやブルーに染められたMOPモデルも、存在しますが 個人的には、ホワイトMOPモデルにぞっこんです😊🎶

    ちなみにステンレスの素材ですが 904Lを使っているモデルも、2020年現在では、ポツポツと存在しているみたいです。
    僕の愛機、SinnのEZM1.1や140.Aも、904L素材にテギメント加工を施し、傷の付きにくいケースに仕上げてあります。
    これらも、最高の相棒達です😊🎵

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    1. Satoshiさん、コメありがとです。
      MOPダイヤル仲間がまた一人増えました(笑)。嬉しいです。

      鉱物のオパール探しも計画してるんで、うまく見つけられたら記事にしますね。まだ産地のリサーチレベルですが・・・

      それと、ステンレスの904Lとうとうロレックス以外にも普及が始まったんですね。

      904Lについては、作る側は手間とコストがかかるんでしょうが、買う側からすれば、硬くて綺麗な状態が長持ちするという良いことだけなので、もっと普及してくれないかな、と思っていたのでSinnの話は朗報です。

      ドレスコードのゆるい職場なので仕事に平気でMOP付けて行きますが、Satoshiさんも、嫌な相手に怒られたとき、私が良くやるように心の中で「そんな口きいていいのか? 俺はこのとおりMOPダイヤルとよろしくやっている身だぞ」的に乗り切っていただきたいと思います。

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  2. 初めまして。
    僕も、シーホースⅡのホワイトMOPのホワイトラバーベルトの愛用者です。
    ホワイトのダイバーが欲しくて、このモデルに決めました。
    おっしゃる通り、MOPのオンリーワンの輝きには、惚れ惚れします。
    今や、グリーンやブルーに染められたMOPモデルも、存在しますが 個人的には、ホワイトMOPモデルにぞっこんです😊🎶

    ちなみにステンレスの素材ですが 904Lを使っているモデルも、2020年現在では、ポツポツと存在しているみたいです。
    僕の愛機、SinnのEZM1.1や140.Aも、904L素材にテギメント加工を施し、傷の付きにくいケースに仕上げてあります。
    これらも、最高の相棒達です😊🎵

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