2021年1月17日

No.77 国産鉱物14 福島県でジャスパー(碧玉、錦石、五色石)を採集

(追記 2021.2.10)
未確認情報として、 同じ東北中央自動車道の別の現場からも硫化鉱物が出土したとの情報あり。
toskaniniの推測では、こちらの
切土工事にひっかかったのは「柱田鉱山」からつながった鉱脈ではないかと
また、この切土で出た土についてはどこに運ぶかでちょっと揉めてるという噂も聞こえてきた。どうやら運ぶ予定だった盛土を必要とする現場の進捗に遅れがある模様。
確かに、黄鉄鉱や黄銅鉱が野ざらしのままだと酸性雨に反応して有毒ガス発生のおそれがあるからそのあたりは少し心配である。
なお、工事中の現場区域内に仮置されているので残念ながら標本採集は不可能な状態となっている。
(以上追記終わり)


幸運にも、建設中の東北中央自動車道のトンネル工事現場の関係地から碧玉(ジャスパー)を採集することができた。


赤、オレンジ、黄、緑、そして一部にはパープルまでと豊かな色彩
ジャスパーなのにくすんでなく半透明っぽい質感。
ちなみに和色で表現すると、赤、紅、緋、橙、黄、緑、碧、青鈍(あおにび)、萌黄(もえぎ)、紫、が確認できる感じ。
個人的には、佐渡の赤玉、黄玉、五色石や津軽錦石に負けてないジョリーグッド!な色彩石だと思っている。

このトンネルでは、一昨年、掘削中に大量の硫化鉱物が出土したため施工業者のJVが鉱毒対策の地元説明会を行った、とのこと。
地元の新聞にすら載らなかったこの情報は、あるゴシップ誌の読者投稿コーナーに載っていたもの。

場所は福島県伊達市保原町。地元中の地元である。
……のでピン、ときた。「幻の上保原鉱山の鉱脈にぶつかったな」と。

文献には、明治期に富保鉱山や高子鉱山の近傍地で金、銀、銅を産出し昭和初期に廃止された鉱山、とだけあってあまり詳しい情報がない。当時の掘削技術では枯渇と判断された鉱脈が実は山体の奥まで伸びていたということだろう。

また、平成23年に地元の郷土史家が昭和の戦前に鉱夫として働いた地元古老(おそらく最後の鉱山関係者)から聞き取った記録によれば、「有望な鉱脈を発見して掘り進むと廃鉱石で埋められた江戸期や明治期の旧坑道にぶつかることも多く坑道を掘り進めるのにとても難儀した」とある。
はるか昔から何度も中断しながら開発されたことを示すとともに、抗口や鉱脈・坑道の情報がその都度断絶していた(後世に記録が引き継がれない)ことを示す重要な証言だろうと思う。

大まかな各鉱山の位置関係は、高森山の南側福島市との境界あたりに富保鉱山があり、高森山の西側高子沼の近辺に高子鉱山があり、高森山を中心に複数の鉱脈、坑口を持つ上保原鉱山があり、さらに扇状地形の田畑を越え霊山方面に向かって東へ行くと柱田鉱山がある。

ちなみに、高子沼は1591年に伊達政宗が豊臣秀吉によりこの地を召し上げられた(いわゆる奥州仕置)際、新たにこの地を治めることとなった会津黒川藩の蒲生氏郷から高子鉱山の坑口を隠すために築造した人工沼である。
伊達家発祥の地をいつか蒲生氏郷から奪還してやる、との強い決意を政宗が胸に秘めていた証左であろう。
シュワちゃんの「I'll Be Back!!」とおんなじですな。

これらはいずれも金を産出した「金山」である。それも「六白金山」つまり六割が金、4割が銀という超高品位の鉱山と称されたと伝わっており、江戸時代より以前から「陸奥(みちのく)の金(きん)」の重要な一角を占めていた存在らしい。江戸後期から明治期にかけての最盛期には村内外から多くの人々が集積し遊郭、旅籠も備えた盛り場と化していたとのこと。
現在の山あいの集落地の風景からはにわかには信じられない話である。

そして、今回のトンネルとは高森山の東側の端を霊山町方面から伊達町方面へと貫入するもの。

厳島神社を起点とする高森山の登山道は、実は鉱山稼働時の搬出路の名残ではないかとtoskaniniは推測しているが、文献にはすでに昭和初期には「抗口悉く埋没し」とあり、仮説の検証はかなわない。

そんなことで、在りし日の地元の鉱山(ヤマ)の賑わいを今宵もこの石を肴に偲ぶのである。

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