かつて、toskaniniが2019年に福島県X鉱山のズリの中から見つけたオパールのような遊色効果を持つ美しいアメシスト。
学術機関リポリトジ調査の結果、ようやくこの稀有な石の正体の謎が解けた。スッキリである。
答えは大先輩の残した論文の中にあった。
福島大学理科報告(1955)に三本杉巳代治博士(Dr.Miyoji SAMBONSUGI)が執筆したX鉱山の地質・鉱床の調査報告が収録されている。
以下論文から抜粋して引用(一部の漢字を新字体に変換している)
引用ここから
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(5)角閃石ー斜長石ー石英粗面岩
この岩石は新沼の西南200m附近に熔岩として分布する。色は灰白色にして比較的多量の石英及び斜長石,又少量の角閃石が斑晶として存在する。石基は流理構造を示さない。
而してこの岩石の最も特徴とするところは,斑晶をなす石英が所謂Opalescent Reflectionをなし,或る方向より見るときは貴蛋白石の如き閃光を発する。
而してこの石英の光学性は一軸性,正,で普通の石英と異るところがないが,屈折率を測定した結果,ω=1.545 ε=1.558 εーω=0.013である。此の値は通常の石英よりもω,ε共に高い値を示している。
而してかかる閃光を発する鉱物として従来知られているものは貴蛋白石*7,月長石*8及び氷長石の一種のみで石英についてかかる性質のものは未だ報告をきかない。
*7 和田維四郎:日本鉱物誌(第三版)(1947)p.174
*8 Dana:System of Mineralogy(1915)p.318
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引用ここまで
この石の正体は、「通常よりも屈折率の高い水晶」である。
ただの(普通の)水晶とは厳密に光学的特性が異なるのだ。
『貴蛋白石の如き閃光』とは自然に読めば、普通にオパールのような輝き(いわゆるファイアのこと)を指すと思うのだが、一応、念には念を入れて英語表現の確認をすると・・・
論文での表現「Opalescent Reflection」を様々な辞書等で厳密めに確認すると、①オパールのような虹色を伴う反射、②乳白色に虹色を伴う反射、③単なる乳白色の反射、という3つの訳が考えられることが分かった。
しかし、③の反射光は他の鉱物でも確認できるありふれたもの(例えば正長石、方解石など)であり、ことさらに、貴蛋白石の如き、とまで表現することには矛盾を感じてしまう。
なので、おそらくは虹色の遊色様の反射光が確認できたのだろうと強く推測できるのである。
最近、X鉱山のズリ場から採取したアメシストその2
遊色効果の本質は可視光線の乱反射にほかならないので、屈折率が通常より高いという特性は目の前の事象と完全に整合しており、説得力がある。
論文が書かれた1955年(昭和30年)時点でのオパール(貴蛋白石)、ムーンストーン(月長石)、アデュラリア(氷長石)以外で遊色状反射光を放つ鉱物の我が国初の発見報告例。
すごいぜ X鉱山!!
勝手に「オパール水晶」と命名しちゃうこととした。
最も相応しい名前だし、何より我が国で始めて発見されたんだもの。
いいかなぁ~? いいともぉ~!!(^^)
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